どうなる?! 国立大学法人化

                                     (「緑の旗」2003年7月号より)

みなさんは、いまの大学に満足していますか?今春の新入生アンケートでは、大学に期待することのトップは「自分の興味ある学問分野を学びたい」で、8割をこえました。また、不安なことは「学費や生活費」29.5%、「希望通り勉強できるか」24.3%でした。(03年度全学連調べ)

こうした結果からも、学びがいあるキャンパスライフをつくることは、寮自治会の大事な役割の一つです。ところが、いま国会で審議されている「国立大学法人法案」では、大学と学生寮のあり方を大きくかえ、私たちの願いを裏切る方向がうきぼりになっています。本稿では、国立大法人化法案が私たち寮生の学生生活に何をもたらすのか、私たちはどうしたらいいのか、問題提起したいと思います

問題点1 学費の大幅値上げ、学生寮の「収益事業」化の危険が高まっている

問題点の1つは、学生の経済負担がふえることです。法案では、国の財政責任をよわめる仕組みがもりこまれています。そして、「効率的」で「収益」のあがる経営をしいられます。これまで国がつくってきた大学関係の借金、1兆3千億円も大学におしつけられます。その結果、学生の負担をふやそうという計画が、具体化されつつあります。

例えば、学費の大幅値上げです。政府の資料では、授業料は、52万800円から70万6800円へと値上げすることが可能になります。ロースクールになる法学部では、学費の上限がとりはらわれ、私立大の法学部では200万円前後の学費が検討されています。(注1)

また、学生むけ施設でも負担がつよまります。政府報告「新しい『国立大学法人像』について」では、「学生むけサービス」はすべて「収益事業」とされています。東京大学では、学生寮をはじめ、公開授業、体育施設、図書館、教室や会議室などで「収益」=「もうけ」をあげることが検討されています。学生寮にとっては、寮費値上げや水光熱費負担増につながりかねません。

問題点2 自由な学び、研究ができなくなる

問題点の2つめは、自由な学び、研究ができなくなることです。法案では、文部科学大臣が「目標」をきめ、それにむけて研究・教育の競争をつよめる仕組みがあります。

教員のなかには、自由な学問研究ができなくなり、政府の圧力で真理探究がゆがめられる∞お金にならない学問がすたれてしまう≠ニいう危惧が、強くよせられています。ノーベル物理学者の小柴さんは、法人化問題について、次のように訴えました。「採算に結びつかない基礎科学が冷や飯を食うのは目に見えています」、「日本は『金を出させる相手』じゃなく、金を出さない場合でも日本の言うことは本気になって聞こうという、そういう国になってほしい。お金にならないけれども、学問の分野で尊敬される。そうなってほしいと願います」(「東京」4月10日付)。

教育分野でも、競争がつよめられます。法人化に先駆けた実践例として、山梨大学があげられます。「粗製品は出さない」というコメントとともに2001年から、成績が悪い学生に退学勧告をだしはじめました。その数は104人にのぼったそうです。政府の提言をうけて、いくつかの私立大学ではGPA制度を導入し、5段階評価で2年連続平均2未満になると退学勧告し、学生を競争に駆り立てています。この方向では、自由な学びの環境がなくなり、大学が受験競争の延長になってしまいます。

問題点3 トップダウンの運営がつよまり、自治が保障されなくなる

問題の3つは、学長のトップダウンの運営がつよまり、大学自治、寮自治が保障されなくなることです。法案では、学長がえらぶ数人の「役員会」が決定権をもつとともに、予算や学則、施設整備など経営にかかわることを審議する「経営評議会」は、半分は学外者で、例えば政治家や役人、経営コンサルタントなどで占められることになります。大学自治、学生・寮生の自治はまったく保障されていません。

いくつかの自治寮では、大学と交渉しづらくなったり、管理がつよめられたりしていますが、そうした傾向がつよまるのは必至です。

■ 廃寮、自治寮つぶしを許さない運動を、一つ一つの寮から広げていこう

これまで具体的な問題点をのべてきました。大きな目でみれば、今、大学が戦後かつてない規模で変えられようとしています。大学の再編統合がすすめられ、とくに教育学部は存亡の危機にあるところが少なくありません。

学生寮の存在自体も、大きく問われています。福岡教育大の武丸寮では、くりかえし大学側と交渉していますが、来年度の存続もきまっていません。静岡大の雄萠寮でも、廃寮のうわさがたえません。前述のような大学法人化をすすめれば、学生寮への財政援助がたちきられ、自治がよわめられ、廃寮や自治寮つぶしへとつながってしまいます。

いま法人化をめぐる状況は緊迫しています。全寮連では、6月下旬にも国会や文部科学省に要請行動を行いました。現在ドミトリーズアンケートなどで各寮からの声を寄せてもらっています。ぜひ、ご協力よろしくお願いします。今後も寮生大会などで、法人化ストップの意思をひろげ、アピールしていきましょう。また、大学ごとにも法人化にむけた検討がすすめられていますが、教職員組合などと連携して情報公開をもとめ、自治寮を守るために声をあげていきましょう。

以 上

(注1)  学費値上げについて、その後、政府から新しい計画がだされました。授業料、入学金ともに10%の値上げが可能になり、約90万円もの高学費になる危険がうまれています。最終的には大学ごとの判断なので、各寮自治会のとりくみも、重要になっています。

 

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