国立大学における厚生補導施設の改善充実について

(「厚生補導施設充実に関する調査研究会報告」抄)


                                 1980年6月30日

厚生補導施設改善充実に関する調査研究会

大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究することをその任務としている。このため、その教育・研究に直接かかわる諸条件の整備が必要であることは言うまでもないが、大学における教育をより実りあるものとするためには、厚生補導施設の整備充実も大切な点である。特に、近年大学進学率の上昇について能力・適性等も多様化している学生の人間形成に資するとともに勉学の諸条件を充実するため、課外活動の充実や生活環境の整備をすすめることも、必要性を増してきており、その中心となる学生関係の諸施設を促進することが重要な課題となっている。

こうした学生関係施設としては福利厚生施設、課外活動施設、保健管理施設、体育施設、学寮などがあるが、当調査研究会は文部省の委嘱を受けて、これらの施設のうち、国立大学において現在特に整備充実が緊急を要しかつ、管理運営面での改善が指摘されている大学会館・課外活動施設及び学寮を取り上げ、その整備等の方針について調査研究を重ねてきた。

以下は、その調査研究の結果をとりまとめたものであり、この報告をもとに関係機関における検討が進められ、これらの施設が、その本来の在り方に即して、逐次整備充実されることを期待するものである。

なお、保健管理施設、体育施設についても、その整備等の方針について今後検討される必要があると考えているので、この旨付言しておきたい。

T 学生会館(略)

U 学  寮

学寮については、もとよりその機能として経済的な面での効果や団体生活による人間形成の面での効果という両面を備えているものではあるが、近年、国民生活の向上や学生の意識の多様化に伴い、学寮に対する学生の志向も変化してきており、今日では、主として勉学と生活のための良好な居住施設であることに対する期待が強まっている。

大学は、このような要請や大学の立地条件等を踏まえ、設置の可否及び設置する場合の適切な規模を決定したうえで、学寮の整備を図る必要がある。

1、現状と問題点

(1) 昭和54年現在、国立大学の学寮の収容定員は39514人で学生総数に対する収容力は約12%であるが、入寮者は28824人(入寮率72.9%)で学生総数の8〜9%となっている。入寮者の内訳を学寮の構造別でみると、新規格寮(昭和50年度以降新築の鉄筋寮)は6717人(入寮率92.9%)、新寮(昭和34年度以降新築の鉄筋寮)は、16853人(入寮率71.9%)、旧寮(木造寮)は5254人(入寮率59.5%)である。施設・設備が老朽化している旧寮や一部の新寮においては、入寮率が低く、中にはわずか数%にすぎないところもあるのに対し、新規格寮の入寮率は高い。

(2) 旧寮、新寮においては、寮生が本来負担すべき経費について大学が負担している場合が相当みられ、また、入寮選考・入退寮・負担区分等に関する寮規則が未整備であったり、規則を有していてもそれに基づいた適正な管理運営がなされていないものがある。更には、大学が入寮を許可していない不正入居者がいたり、事実上学生セクトの拠点になっているものも見受けられる。

2、学寮のあり方

(1) 設置の形態

学寮は、大学の環境、沿革等の関係でその形態等は一様でなく、それぞれ特色を有するものではあるが、現在の我が国の居住環境、学生の志向(入寮希望者の85%が個室を希望している。)等からみて、学寮の新改築に当たっては、いわゆる新規格寮方式(個室、寮外食堂利用、光熱水料等の個室メーター設置)を採ることが適当であると考える。

(2) 管理運営

学寮は、大学が設置し運営するものであり、管理上の権限と責任が大学当局にあることは言うまでもないことである。したがって、大学は入寮選考及び入退寮許可、経費の負担区分、使用に当たって順守すべき条件など必要な事項を学寮管理規則等で規程し、明確にする必要がある。

(3) 経費の負担区分

学寮は、大学が設置管理するものであるので、その設置管理に必要な最小限度の経費は大学が負担するが、市民社会における自明の原則として寮生の日常生活に必要な経費即ち私生活に係わる経費は寮生が支弁すべきものである。

3 設備の方針

(1) 学寮の整備に当たっては、前述のように、新規格寮方式を採ることが適当であるが、この場合、寮生の生活上の便宜を考慮して寮内に自炊の設備を用意するとともに、一般学生が利用する学内食堂の整備を図り、その運営に当たっては寮生が利用しやすい条件を整える必要がある。

(2) 昭和50年9月現在108寮あったいわゆる老朽寮の改築は年々進められ、昭和55年度末には49寮となる予定である。

これらの寮は、災害発生の危険性が高く、また入寮状況が全般的に低率である等管理上の問題があるので、寮生募集の停止、廃寮又は新規格寮への建替えなどの措置を早急に講ずることが必要である。なお、老朽寮の統廃合によって大規模寮となる場合は、良好は居住環境を保つため、棟を分ける等の配慮をする必要がある。

(3) 新寮の改修に当たっては老朽寮の場合と同じく、原則として前述の新規格寮方式とすることが望ましい。なお、早急にこの方式への移行が困難な状況にある場合であっても、少なくとも経費負担区分の問題の解消を図る必要がある。特に、食堂を存置せざるを得ない場合においては、その経営を業者委託とするか、直接炊事等に係る人件費を私費支弁とする等当面の措置を講ずる必要がある。

4、今後の課題

現行施設基準については、学寮のより良好な居住環境を得るため、環境基準を引き上げる必要がある。なお、共用部分についてもその配慮の工夫及び基準の改善について配慮する必要がある。

 

 

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